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投稿日時
2020-10-13 20:22:56

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んだ本。象使いティンの戦争:作品社。

表紙絵を見るに、機械仕掛けのゾウ軍団なんかではなさそうな、茂る葉の下に象と向き合う腰巻スカート△
の笠の人。頁を開くと、南ベトナム中央高地、の文字。アフリカ印度タイランドではなくベトナムです。
日本では大抵の象が、人に見られるお仕事してますね。この象使いの象のレディさんは丸太を運ぶ象、初産
のお子さんを亡くして今は第二子の母です。ママン!て感じではまあ、ないですもっと若い。

十四歳の先輩の記録を抜いて最年少の象使いになりたいティン君が、レディさんのマスターです。なので。
学校には行きたくない宿題するヒマなんかない、姉上は才媛で母さんは不満、よりも息子の将来を憂いてい
ます。しかし数十年後に、レディさんが歯を失っても餓死しないよう介護した後に、後継象使いの育成を考
えているんだとは阿呆なだけの少年ではない。学歴でも出世でもない、象!が一番な優しいお子様の未来が
戦争のせいで痛めつけられるというアビスなお話でございます。戦争とはあの、大国アメリカが勝てなくて
大勢の兵隊さんがPTSDになった(ヤコブの梯子やバナナフィッシュの人と)ベトコンの。物を知らなくて
侵略、かもう少しソフトにイジメに行ってその罪の意識で自滅したぐらいに思ってましたが。

共産主義の北(+ゲリラ=ベトコン)VS南の、ベトナムの内乱に米国が加勢したのです。頼れる味方が去っ
てしまうのを知っているティン君には、共産主義の規則でがんじがらめっぽい生活は願い下げです。米軍に
雇われているお父さんのトラッキング(痕跡を観察する警察犬的なお仕事)を手伝ってもいまして、いずれ
敗戦+失業、生きるために最悪ゲリラ活動するのかも、とか思ってるローティーンとかハードモード殺伐っ
てゆーか、そりゃ象使いでしょう。何ならVナントカでもラノベ作家でも、破壊活動よりずっといいと思い
ますけど、非常時。人が困ると人につながってる動物は人より困りそうです。がっつり食べごっそり飲み、
賢くてもカサ高くて力持ちの、象軍団の話は出ませんけども丸太運び以外をさせられるかするかもしれない
時、人間は人間を優先するの(に動物を可愛がったりするの)ですよね。

ところで本書には著者と訳者の他に選者がおはしましてこのお名前はどっかで見てる。骨のあるヤングアダ
ルトを紹介すると仰っている(そー思うとガンダムなんかは売り方考えてます)とおりに、家族とはぐれて
追い回されたり殴られたり、米軍と近かった事でハブられたりそれで憎んだり、そもそも僻地の少数民族の
ティン君らは南側でも今までは渦中じゃなかったり。手足がなくなったりはしない骨です。

ほぼやられっぱなしの、反撃する力(筋肉も頭脳も後ろ盾)もない主人公ですが、象が好きで、考えるのを
やめないことで、希望のない物語の先へ先へと読者をひっぱってゆきます。自分たちの象を助けるために野
生の象を狩る(食肉用に。彼自身野菜より肉世代とはいえ象肉は別、判別できるそうです)決意するあたり
ですかねこんな選択を迫る地獄のような世界で信じたい存在になります愛するものがあるって強い。北軍の
人にだってあっておかしくないから地獄なんですが。

切り拓いた道の先が成功か失敗か、たとえば生き延びたら○なのか、夢を捨てないとかクズくならないとか
笑顔でいるとか。全部は無理かも。争いのない世界を作れたら、完璧ですけどイキナリそこには、足りてな
い(祈りが?)そんなのは奇跡ですが、信念を捨てて再び歩き出したならパーソナル奇跡だと思いました。
大切にしていた、積み上げたものがなくなった後に浮上するようなもの、何があるでしょう愛ではなくても
生きる価値だの意味だの、それともそおゆうのもういいからって価値観?一人分から増やしていけそうなお
得感ある奇跡です。
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