二次SS お気に入り画像登録
二次SS

登録 タグ 編集を行うにはログインしてください

投稿日時
2012-09-18 15:02:18

投稿者
プロフィール画像
m

このユーザのマイページへ

お気に入りユーザ登録
投稿者コメント

 「木になった駝鳥と黒豹」

ご面倒かけます社会のお荷物から一転、ヤツは伝説へとのしあがった。

すごく強くて怖い黒豹(俺の爺さん)を撃退した隻足の保父さん、だ。

怖ろしがるのは勝手だが、弱いモノいじめをしてるわけではない、弱いのから喰う、合理である。

肉食の俺らには、ヤツのした事とは営業(いや生存だな)妨害でアイデンティティの否定だ。



木の下の水溜りは、立往生したヤツの涙でできたのかもしれません泉、だ。

木の根が地中の帯水層をかち割った、ただの偶然。を。美談に仕立てたメディアの神業的詐欺。

ヤツの味わったであろう最大の悲劇とは、見捨てられた屈辱、忘れられた栄光じゃないかと思う。

調子良すぎだろ?その涙って何の涙?誰が流させた涙なんだよ。



今日も今日とて俺はこの、伝説の、木の下に頑張っている。

水を求めて来るのや、見物に来る馬鹿を(何を見るんだか観光名所だ)待ち伏せする良い狩場だ。

不粋な卑劣な野獣だと叩かれる、が、ゴメンナサイ僕ケダモノでとかどの面下げて豹が言える。

爺さんへの供養だとも思っている。親父が積年の確執と向き合う事はついになかった。



駝鳥ごときに退いちまった爺さんてちょっと格好悪い?

たかが駝鳥とは言うが鳥類最大、強靭な嘴の突きも蹴爪のキックも上から来る、そこそこ手強い。

ヤツを片足にしたのはライオンさんで、言いかえればそこでやめといたわけで、引き際を心得たと

言うか、打たれても打たれてもなおあきらめない……そんな辛気臭いハンターってどうよ。



ぼっちになったヤツは鬱積つのらせていたはずで、負のパワーっていうかな、思う一念。

(人を育てるのは悩みだけなんだそうだ。だが断る。そんなもんに育てられた?恥ずかしすぎる!)

……ヤツがいかにとんでもなく常軌を逸してしつこかったか、ってコトなんだな。

木になった、細胞組織を変えた、奇跡と言うより動物でいられるラインから外れちまったわけだ。

英雄願望とか、名誉挽回とか、ひ弱なちびたちのご期待とか?

笑っちゃうね、そんな卑小でイヤラシイモノに支配される豹はいない。そうゆうのは豹じゃあない。

ライオンさんなんか豹より孤高(クール)だ、群れの餓鬼どもでさえ排除の対象になる。



けどちょっと好奇心、ていうか、俺は考える豹だから、駝鳥が闘って木になった、なら闘わない豹も

そうなってこそ正しく世界の理としての均衡じゃないかとわくわくしてみたりしたのだ。

だから、この木の下で――

動物を襲わないで何日も何日も堪えたあかつき、俺はあらたな伝説となるのではなかろうか。とか

思ったのだった、最初はそこだった。だがな。

腹ペコで目の前に活きの良いエサが顔出す。駄目だ、体が勝手に動いてる。飢えてもない時、殺す

それはない。俺らはそれをしない。が、無理なのだ。――行け!

と筋肉が、牙が、爪が脳になって猛る。生まれ落ちた時から俺とともにある、時折俺を呼び覚ます

声。俺が真実の俺となる瞬間だ。おまえらにわかって頂きたくもないね。俺らの背中に重石はない。



究極、爺さんが負けたならこの重石にといえないこともない。ヤツが背中にのせていた弱いやつら。

弱いものが自分より強いものを下にして、下になったそいつが更に強いはずのものの上をゆく。

弱肉強食の掟をひっくり返したってのは何?見返りにさし出されたものは何だ?俺には分からない。



草を揺らして風が吹きわたる、夏の水場。暑苦しい駝鳥の妄念の遺品だというのに、涼しい。

涙の水は冷たく甘い。弱い生きものと強い生きものの別なくここはいつも快適だ。

実はそこにあるのだな、俺が居座り続ける理由というのは。

豹が出た!という話だけでも大概のヘタレは震えあがり、根性無しは金輪際寄り付かなくなる。

いまやここには誰もこない。少なくとも勇気も覇気もないものならいない。清浄にして完璧。当然だ。

伝説の勇者の終焉の地なんだから、そうであるべきじゃないか。

ここに来てから俺が獲物をしとめたのは実質2、3回かそこら。居ないエサでは捕りようもないし。

このままいけば遠からず、役目を終えた俺は静かに活動を停止するのだろう。

そしたらどう成るんだろうか。この体は。




木になるほど自己顕示欲はない。ハイエナどもの腹に収まって一部はハイエナになり排泄される。

妥当なところだが、もう少し先の話だ、土に吸い込まれて分解され蒸発して循環、拡散するだろう。

俺のカケラは風に漂い、いずれ草原に、この木に、すべての動物にも降りそそぐ雨の粒子となる。

生命をうるおすこのヤツの泉の水とは違う水に。

そのとき俺はなんか勝った気に、いやそんな矮小なもんではなく。もっと違うのかもしれないが。

どんな気になるのだろう、期待に値する。ところがどっこい――


いつまで青クサいコトやってんのよッこの中二豹!


――気がついてた? いや。……俺の命運は伝説に遠く、当分は地上、こいつの下にあるようだ。




                   *   *   *


お粗末さまでございました。「かたあしだちょうのエルフ」です。小学校の図書室の殿堂入り絵本。
「山のクリスマス」「ちいさいおうち」「わたしのおふねマギーB」「しろいうさぎとくろいうさぎ」……
すてきなご家庭の平和、みたいな路線がお気に入りだった現役当時はトラウマ怖い本でした。この
黒豹めちゃくちゃ怖い、あ、ライオンもです。頁めくったら硬直です。作者はおのき がくさん。

バオバブの木の写真を逆回し、とあとがきにあります。これはお化け大樹の決定版みたいな木で
樹齢四桁、幹は樽型になるそうです。どうやったら駝鳥?という外観ではあるのですが、存在感が
樹木じゃないというか、今にも動き出しそう……以前に目が合いそーでイヤってカンジ。
エルフさんてラテン系。彼が泣いてる姿にはうう可哀想ー、以外の言はありませんです。
→画像情報ページへ
最大化 | アクセス解析 | ユーザ情報

メッセージ送信
▽この画像のURL(リンクについて)▽


▽この画像のトラックバックURL▽(トラックバックについて)


情報提供